すむたび in 宮古島:地下ダム資料館を見学しました

宮古島には地下ダム公園地下ダム資料館がありますが、全く別の施設です。
ここは地下ダム資料館に関する記事です。
地下ダム公園に関する記事はこちらへどうぞ。

前記事で宮古島初の地下ダムである皆福地下ダムの地上にある地下ダム公園について書きました。

今回は宮古島で2番目にできた地下ダムの上にある地下ダム資料館を紹介します。
なお、撮影が可能なのか未確認のため、館内の写真はありません。

地下ダム資料館は地下ダム公園(皆福地下ダム)から1kmほどしか離れていない場所にあります。
地下ダムの名称は福里地下ダム。皆福地下ダムの貯水量が70万トンなのに対して、福里地下ダムは1050万トンという規模。
宮古島における本格運用に耐えうる地下ダムといえるでしょう。

資料館の入館料は300円。
海が自慢の宮古島でわざわざここまで来る観光客なんているのかなと思いきや、ちらほら見学客は来ています。
といっても館内にいるのは2〜3組ですが。

展示内容は地下ダムの構造に関する事、設計・建設の歴史や実際の工事手順、そして宮古島特有の地質に関するものになります。
宮古島における水をめぐる大変な歴史の写真資料などもあって、島と水とダムの関係がざっと理解できる内容となっています。

展示物に関してはもっと掘り下げてもいいかなと思ったのは、案内の男性(学芸員的な方?)の説明の方が面白かったから。

土木・地質に興味のある方なら、いろいろ訊けて勉強になるかと思います。
私は専門外だったけれど、元々地下ダムに興味があって、予備知識があったから興味深く話を聞けました。

印象に残った話が2つあるのでご紹介。

一つ目は、宮古島初の地下ダムである皆福地下ダムは失敗だったという話。
長崎の樺島ダムと同じ技術者による設計だったらしく、失敗がどの程度だったのか分かりませんが、実用に耐えうるだけの完成度ではなかったという意味かもしれません。

その失敗を活かして、こちらの福里地下ダムは別の技術者が設計し、宮古島の水事情を大きく変えることになったようです。

二つ目は宮古島の海の話。
宮古島に河川がないため、海の美しさは東洋一といわれていますが、これは河川が運ぶはずの土砂に含まれる栄養分も海には存在しないということ。
ということで宮古島に美味しいものはないらしい。

さらに、海特有の磯臭さがない原因も、海の栄養不足によるものだそうです。
たしかに宮古島とその周辺の海には匂いがないんですよね。

そのほかにもいろいろ教えてもらい、ずいぶん時間をとってもらいましたが、めったに来れる場所でもないので、聞きたいことはできる限り質問できて満足。
この資料館は興味のある見学者にとってはかなりお勧めの場所だと思います。

それから、私は興味がないのでもらいませんでしたが、福里地下ダムのダムカードがもらえます。
さらに、皆福地下ダム、砂川地下ダム、そして建設中(2020年2月現在)の仲原地下ダムのダムカードも配布されているようです。

皆福地下ダム、砂川地下ダム、仲原地下ダムについては、それぞれのダムの(複数ある)撮影ポイントのうちどれか一つで1枚ずつ自撮りしたうえで申し込む必要があるそうで、かなりマニアな人でないと持ってないのでは?と思います。

地下ダムは設備自体は地下にあるので地上からはさっぱり想像できません。
なのでダムカードと言われてもピンと来ませんよね。

さて、地上にその姿を現さない地下ダムですが、どの範囲がダムなのか地上でもわかるようになっています。
そうしないと、地上を汚染した場合危険ですから。

宮古島の道を走っていると、こんな看板があり、地下ダムの範囲が示されています。

上の写真の看板の水色で塗られた部分が雨水採取エリア、つまり地下ダムに水が流れ込む範囲です。
そして、このエリアの右下の赤い部分が現在地です。
高低差の関係上、左上から右下に水は流れ、止水壁で貯水されるのでしょう。

そして同じ場所にはダム関連施設らしき建物と、ダムの名前があります。

ここは地下ダム資料館とは全く別の場所で、さとうきび畑のど真ん中です。
でも、ここの地下にはダムがあるのですよ、と示しているのです。
なんともシュールな光景ですよね。

このように、姿の見えない地下ダムですが、地下ダム資料館のそばにだけ、一部だけ姿を見せています。
それがこちらになります。

地上をくり抜いて、地下ダムの一部分を切り取っているような形です。

向かって左側が上流で、右側が下流。
橋がかかっているあたりが止水壁になります。
左側から地下水が流れてきて、この市垂壁で堰き止められているわけです。

止水壁の仕組みを近くで見てみましょう。

これは地上にある普通のダムの堰堤と役割は変わりありませんね。
ただ、この止水壁の高さをどうするかが重要で、高くすればするほど多く貯水できますが、地上にまで水が溢れ出し、湿害を招くかもしれません。

というわけで、余分な水は下流(海)へ流れるような高さになっているのです。
見学した日は雨量が十分の日で、チョロチョロと越流していました。

止水壁の構造も分かりやすく説明されていました。

それにしてもこのような止水壁が地下数キロにわたって張り巡らされているのです。
すごいことを考える人がいたものですね。

止水壁は以下の写真(上の方)の赤線の範囲に張り巡らされていて、これで地下水をブロックしているようです。

そして、貯めた地下水は汲み上げて、高台にあるファームポンドという水タンクへ送られます。
(写真のは伊良部島にあるファームポンド)

その後畑に分水されるというわけです。
宮古島にはあちこちにファームポンドがあって、最初なんだこれ?って思っていたのですが、地下ダムを含む利水ネットワークを構成していたのです。

地下ダム資料館自体は小規模な施設ですが、施設を見学することによって、地下ダムが宮古島の人の暮らしや産業に大きな影響を与えたということがよく分かります。

そういうことを念頭におくと、そのへんのさとうきび畑もマンゴーのハウスも、ファームポンドもちょっと身近に感じてきます。
その土地のことを知るにはもってこいの施設ではないかなと思いました。

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