訪日外国人が増加するにつれて顕在化した問題、それが「観光公害」です。
せっかく来日してくれた人たちを「公害」とは何事だと思いますが、当事者ならまあそう思うよなあと同情しています。
あと、外国人ばかり注目されていますが、観光公害の原因は外国人/日本人関係なく、増えすぎた観光客なのですよね。
私は8年前まで神奈川県鎌倉市に住んでいたので、観光公害という言葉が出る前から、「観光客多すぎでたいへんだぁ」ぐらいに感じていました。
今回は鎌倉市限定で、昔の記憶を元にいろいろ記してみようと思います。
どこに住んでいたのか?
鎌倉市は神奈川県の三浦半島の付け根にある小都市。
もちろん由来は鎌倉幕府にあります。
そういうことで史跡に事欠かない観光地であります。
私の家はJR鎌倉駅から徒歩10分ほどの海寄りの住宅街。
鎌倉といえば鎌倉山など裕福なイメージがあるけれど、大体はふつうの住宅街。
我が家もありきたりの量産型住宅のひとつでした。
近所に神社仏閣があるわけでもなく、観光客は普段見かけません。
夏になると海水浴に来た人をちらほら見かけるぐらいの、いたって住み心地の良いところです。
観光客が多くて困ったこと
車で街から脱出できない
鎌倉の地形を見れば一目瞭然なのですが、南が海、その他三方に山がそびえ立つ天然の要塞のため、街の外に出るルートが限られることです。
域外につながるルートは6本。
まあ実際に買い物とかお出かけに使うのは、藤沢/大船/朝比奈ICへの3本だけです。
観光客が押し寄せると自然と車も増えてやたらと混雑します。
あとすべて片側1車線の狭い道なのでスピードも出せず、観光客もたくさん歩いていて運転に気を使わざるをえず、混雑に拍車がかかります。
普段より時間がかかるだけで、脱出できないは言い過ぎですが、車の利用は憂鬱になります。
バスの時間が読めない
車がだめならバスがあるぞ、なのですが、これも混雑に巻き込まれ普段より時間がかかります。
まあ山を越えればそれなりに走るのですが、ノロノロ走るバスって疲れるのであまり使いたくないんですよね。
江ノ電に乗れない
私は普段利用することはなかったので実害はなかったのですが、地元住民にとっては深刻な問題だったようです。
観光客が多すぎでものすごく混雑する、時には積み残しになっていたようです。
小さい車両が4両で12分おきに来るのですが、単線なのでこれ以上増やすことができないみたいです。
たしか市民にのみ優先乗車できるパスが発行する話が出てましたが今はどうなってるんでしょうね。
あと、江ノ電乗れない問題は隣の藤沢市も抱えているはずで、そちらも気になります。
買い物が大船ばかりになる
そういうわけで、休日は陸の孤島になる鎌倉ですが、JR横須賀線鎌倉駅があるのでこれを使えばいい話ですね。
江ノ電と違い15両つなげていますので、休日のピークでも余裕で座れますし。
JRの行き先は大船/横浜方面。
結局ちょっとした買い物は2つ隣の大船駅周辺になります。
ちなみに大船は鎌倉市の商業の中心って感じです。
お気に入りのお店がマスコミに紹介され大混雑
これが起こるたび「あーなんてこった、余計なことしないでくれー」って地団駄踏んでました。
まあ鎌倉に限ったことではないんですが。
私はテレビを見ないので、ある日突然混雑し出して「なにが起きたんだ?」と思っていたらテレビに出てましたってオチなんですよね。
おおむね半年経てば落ち着くのでそれまでの我慢です。
観光客自体が原因ではない
観光公害なんて呼び名なので、観光客に問題があると誤解されることもあるのですが、観光客のマナーが悪くて困っているという声は小さくて、強いて言えば夏に街を半裸でうろうろするな、ってぐらいです。
原因は鎌倉の地形と観光客の数。
この2点の相乗効果で観光公害が発生しているのです。
そして、問題はほぼ交通障害に集約されます。
問題は日中のみ
とまあ観光客多すぎで移動も一苦労なのですが、それも日中だけの話。
鎌倉は日帰り観光地なので夕方になれば人混みはスーッと引いていきます。
マックもカフェも地元の人だけの時間になります。
私はその時間が好きで、暮れなずむ街をうろちょろ散歩していました。
こればかりは在住の利点ですね。
日中は人混みにうんざりしてるのですから、これぐらいはいいことがあっても良いと思います。
鎌倉市の対策は?
これ、私が住んでいたことから言われていたんですが、域内に侵入する車に課金する案があるのです。
しかし2019年になっても実現していないようです。
あと、パーク&ライドも推進していますが、「ライド」のほうの江ノ電やバスがすでにパンク状態なので、実効性に疑問が残ります。
それに「パーク」する場所も地形的にないのですよね。
そもそも観光客の供給源が膨大な人口を抱える首都圏である限り、膨大な数の観光客が押し寄せることは宿命です。
鎌倉市を脅かすほどの観光地が現れて、観光客が分散させることぐらいしか思いつきません。
川越市とか有力候補ですかね?芋のお菓子美味いし。
鎌倉が住みにくい唯一の原因
個人的に観光客の多さが鎌倉の住み心地を著しく毀損しているとは思いません。
たしかに毎度毎度休日が来るたびに繰り返される混雑にはうんざりですが、そこは工夫でなるべく観光客と行動がバッティングしないようにしていましたし。
少なくともこんな街出て行ってやる!てほどにはなりませんでした。
私が考える鎌倉の欠点は湿度の高さです。
最初に挙げた地図の通り、前面に海、左右後方を山に囲まれた地形なので、発生した海霧の逃げ場がなく、常に市街地に滞留しやすいのです。
早朝夜間はよく霧が発生していました。
その湿度の高さは驚くべきで、私はクローゼット1個分の服を台無しにしてしまいました。
湿気対策を忘れて黴だらけになってしまったのです。
他にも私じゃないのですが、鉛筆に黴が生えたという話も聞きましたし、油断するとありとあらゆるものに黴が生えます。
こればっかりは我慢ならなかったです。
観光地に住むということ
いま市外に出て思うことは、観光地に住むって大変だなあ、の一言です。
住んでいるときは気づかなかったのですが、客観的に見てデメリットが多いです。
やはり個人で工夫しなければ快適に過ごすことはできないんじゃないかなあと思います。
ただ、交通網など個人の力ではどうしようもない問題があるので、そのような問題が致命的な街は避けた方がいいでしょうね。
観光地というのは誰もが憧れる場所で自然と人が集まります。
いうなれば手垢のついたブランドもの。
人が集まらなくても素敵な街はいくらでもありますから、私はそういう街を見つけていきたいですね。
そういう目的もあって「すむたび」をしているともいえます。