大都会から30分、廃線跡でウォーキング

鉄道の廃線といえば、車社会の地方のお話で、よくサイクリングコースに転用されていると思います。

ところが、大阪の中心梅田から電車で30分の場所に廃線跡があり、ハイキングコースとして整備されているとのこと。
とてもお手軽なアクセスなので訪ねてみました。

JR福知山線廃線敷 -ハイキングコース

場所はJR大阪駅から快速電車で30分、JR宝塚線の西宮名塩〜武田尾間の廃線跡です。
正確には、生瀬〜武田尾〜道場のルート変更に伴って使用されなくなった路盤の一部をハイキング用に開放しているのです。

その距離は4.7km。前後の駅へのアクセスを含めると6.5kmくらい。
アクセスやハイキングコースの概要はにしのみや観光協会が提供している地図がとても分かりやすいです。

にしのみや観光協会作成のマップ
廃線敷マップのPDF

北側の起点は武田尾駅のみですが、南側の起点は生瀬駅と西宮名塩駅のいずれも選べ、いずれも廃線跡までの所要時間は同じです。
今回私は西宮名塩駅からアクセスすることにしました。

理由は以下の2点:

  • 広めの歩道が続いている
  • 交通量の多いR176を横断する必要がない

ちなみに、南側のハイキングコースの入り口に駐車場はないので、車で来ても駅近くの有料駐車場に止めることになります。

北側の武田尾駅近くにも一時利用の駐車場はありますが、数が限られるようなので、早めに行ったほが良いようです。

西宮名塩駅〜スタート地点

今回は西宮名塩駅→武田尾駅の北上コース。
朝8時前に西宮名塩駅に到着しました。

改札を出て右側のエスカレーターを昇って、R176側の出口に。

目の前の高いところを横切るR176の歩道をひたすら宝塚方面へ戻る形になります。
少し高い位置なので、駅を見下ろしてみるとこんな感じ。

一見量産型ニュータウンといった風情ですが、上の写真の右上に変なものが写ってますよね。

ズームインしてみると分かりますが、斜行エレベーターです。

ここは山を切り開いて造成したニュータウン。
JRのルート変更の恩恵を受けた地域でもあるのです。

さて、交通量の多いR176はウネウネとカーブを繰り返しつつ、中国自動車道の下を二度くぐります。
そして、三度目にくぐる手前の信号のない交差点を左に曲がると、ハイキングコースの入り口も間も無くです。

生瀬駅から来た場合、反対車線にしか歩道がないので、この交差点を(上の写真だと)右から左に横断する必要があります。
車が途切れないのでちょっとストレスなんですよね。

さて、うるさい国道とも別れてすぐのところ右手に、谷へ降りる道があります。
なぜかとうせんぼされていますが。

分岐の付け根に、案内板があっち向きにあるので、ここがハイキングコースの入り口だと分かります。

あとは道なりに進めばハイキングコースの入り口に到着です。
ここまで駅から15分程度。

スタート地点〜北山第2トンネル

では立て看板の注意書きを読んでからハイキングの開始です。

廃線敷マップのPDFによると、全長4.7kmで所要2時間とあります。
鉄道の廃線跡ですから平坦なはずで、2時間はかかりすぎでは?と思いますが、足元はほとんど枕木が残っているので歩きにくく、休憩などを入れていれば2時間は妥当なところかなと思います。

景色は最初からクライマックスで、武庫川の渓谷が寄り添います。

基本的に廃線時から設備は変わってないようで、遺構のようなものもそのまま残されています。

対岸にも赤錆た鉄の骨組みが残されており、いったいあれはなんだったんだろう?と気になります。

初冬の朝早く。
山間なので太陽の光はようやく届き始めた頃で、時折紅葉が鮮やかに光を受けます。

さて、序盤のクライマックスは長いトンネル2本。
コース全体で6本のトンネルがありますが長さツートップが連続します。

とくに2本目の北山第2トンネルは413mと唯一の400m台であるうえ、カーブしているのでトンネルの中央では入口・出口両方からの光はまったく届きません。

だから、ライトを消すとこの通り。

本当の闇を楽しむことができます。
しばらくすれば目が慣れるかなと思っていたのですが、人間の目には無理でした。

他に誰もいなければ本物の暗闇がお手軽に楽しめるのでおすすめです。

とはいえ、トンネルの中は風が吹き抜けて寒いので早く抜けたい。
足元の枕木とバラストに足を取られつつ、出口の光が見えた時はほっとするものです。

北山第2トンネル〜第2武庫川橋梁

北山第2トンネルを抜けても、しばらく武庫川の右岸沿いに進みます。

この辺りが最も荒々しい感じで、寝覚の床を彷彿させる渓谷美です。

ただ、水質はそれほどよろしくないようで、滝壺はちょっと泡立っていますね。
上流は三田の市街地ですので、仕方ないですが。

トンネルにはカウントしない構造物をくぐりますが、これはロックシェードでしょうか?
それにしてはピンポイントに短すぎますが。

路肩には使用しない枕木が苔むしています。

何かのケースも朽ち果てるに任されています。
鉄分なので養分になるのでしょうか?

中国の水墨画的な崖を過ぎれば溝滝尾トンネルに入り、その出口に名勝第2武庫川橋梁があります。

第2武庫川橋梁

149mとちょっと短めのトンネルを抜けると、立派なトラス橋が現れます。

ここが第2武庫川橋梁。
トンネルとトンネルに挟まれた橋梁で、見所の一つでもあります。

橋梁マニアなら踊って喜びそうな骨組み。

中央に新設された人道橋が無粋ですが、安全のためには仕方ないですね。

ここがハイキングコースとして整備される前は、すぐ横の細い通路を通っていたようですので、これは高所恐怖症の人にとってはかなり勇気がいるかも。

橋梁上から眺める武庫川も素晴らしいもの。
このルートが現役だった頃、汽車からの風景もこんな感じだったんでしょうね。

第2武庫川橋梁〜ゴール

第2武庫川橋梁を渡るとすぐに長尾山第2トンネルです。
少しだけですが、電気系統の配線が残ってますね。
こういうアイテムがマニア心をくすぐります。

トンネル入り口に銘板らしき物があったのですが、何が書かれているのかは読み取れず。

こういう退避坑も、廃線だからこそじっくり観察できる。
いろいろな楽しみ方ができます。

トンネルを抜けると川の左岸に移ります。さっき橋を渡りましたからね。
この辺りから、武庫川の川幅は広くなり、風景も穏やかなものになります。

そして親水広場・桜の園に到着

ここでは河原に降りることができますので、降りてみました。
来た方向(西宮名塩方面)を振り返ってみます。

流れはすっかりおとなしくなり、水鏡ができています。
写真撮って中央に廃線跡が見えますね。

このあとは、小さなトンネルを2つくぐれば久しぶりの建物が見えてきて、ゴールはすぐそこです。

そして、武田尾側の入口。
私のゴール地点です。

こちらは工事現場っぽい西宮名塩・生瀬側と違って、トイレもありきれいに整備されています。
猪肉を手軽に楽しめる食事処もあるようで、ちょっとだけ廃線跡を楽しみたいなら、武田尾サイドの方が良さそうです。

ゴール〜武田尾駅

ハイキングコース自体はここで終了ですが、残り500mほど歩いて武田尾駅まで向かいます。
といっても川沿いの普通の舗装路を歩くだけです。

住宅や月極駐車場などを横目に道なりに歩くこと7分。
橋梁上に武田尾駅が見えます。

あれが新ルートですが、廃線になった旧ルートは今歩いている道路です。
橋の向こうをさらに進んで、武庫川沿いに進んで道場駅まで続いていたのですが、一般の立ち入りはできないようになっています。

ですので、ハイキングできるのはここ武田尾駅までとなります。

武田尾駅は無人駅。
橋とトンネルにまたがって、力技でホームをねじ込んでいます。

でも電車は15分おきにやってくるので、時間を気にせず利用できます。
これもお手軽に訪問できるポイントですね。

装備、混雑、トイレなど

ということで、「JR福知山線廃線敷 -ハイキングコース」の訪問記でした。

最後に訪問の際に気づいたことなどを少々。

まず、ハイキングコースなので、足元はスニーカーなど歩きやすいもので。
途中、コンビニはおろか自動販売機もないので、飲食物は持参すること。

そして、懐中電灯が必須です。
トンネル内は真っ暗で足元が悪いので、足元を照らせるライトは必須です。

スマホのライトは使い物にならないくらい暗いです。
あと、所々湧水で水たまりになっているので、光がないとずぶ濡れになります。

トイレは西宮名塩と生瀬は駅で、武田尾は駅とハイキングコース入り口までの2か所で利用可能です。

私が訪れた12月初旬の土曜日、午前中早い時間だったからか、すれ違ったり追い越したのは4組だけ。
武田尾に到着した9時半ごろに、団体客がぞろぞろやってきたので、おおむね10時までに入れば静かに楽しめるかもしれませんね。